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製造業において、ESGは戦略アジェンダとして重要となってきており、この状況は今後も続くと思われます。自動車、化学、エネルギーなどの製造業関連企業は、二酸化炭素換算の温室効果ガス排出量(CO₂e)の高排出セクターで重要なサプライヤーです。このため、バリューチェーン全体を通じた排出量ネットゼロを達成するための道筋を明確化するよう、規制当局や顧客から圧力を受けています。
本レポートでは、CO₂e排出量やその他の環境影響の削減におけるドイツ、スイス、オーストリアの大手製造業関連企業44社の進展の状況を、2022年の調査と比較しています。
分析対象に含まれるのは、スコープ1、2、3のCO₂e排出量、CO₂e削減目標、ESG投資などの定量的データと、具体的なCO₂e削減施策などの定性的情報です。
2022年の調査でも見られたように、ほぼ全ての製造業関連企業はESGを念頭に置いています。詳細かつ数値化可能なCO₂e削減手段を導入している企業は少数にとどまっていましたが、CO₂e排出量の効果的な削減に向けて、透明性の確立を各企業が重視するようになってきています。
2022年の調査と比較して、バリューチェーンにおける上流/下流の業務から生じるスコープ3排出量に関して、製造業関連企業の注力度合いや報告の透明性が向上しているトレンドが見られます。加えて、スコープ3に関する排出量の報告とCO₂e削減施策の導入に関する傾向が一致しつつあります。こうした前向きなトレンドの一方で、製造業関連企業の過半数は依然としてスコープ3排出量を十分には報告していません。
製造業各社のCO₂e排出量の95%はスコープ3に含まれており、かつ65%はバリューチェーン下流の製品使用段階で生じています。スコープ1および2排出量に相当する「自社のフットプリント」が占める割合は、推定でわずか5%に過ぎません。
本調査では200超のCO₂e削減施策を検証し、それらがバリューチェーンのどの領域に対応しているかを分析しました。また、2022年の調査と比較しました。以下の図表に示された削減施策の構成割合から明確に見てとれるのは、CO₂e削減の取り組みと、バリューチェーンにおけるCO₂e排出の発生領域との間の整合性が依然として取れていないことです。
しかし、同時に進展の兆しも見えています。「販売された製品の使用」が23%から30%に増加していることから、企業がこのカテゴリーの排出量に対応する施策をより重視するようになってきたことがうかがえます。バリューチェーン下流の排出量に対応する施策は、エネルギーの効率化、製品の電動化、および資源の使用量を削減した環境配慮型の設計などが該当します。2023年1月に発効された欧州連合(EU)の企業サステナビリティ報告指令(CSRD)などの新たな規則の順守を製造業関連企業が進めるなか、こうした施策は今後数年間にわたり広がっていくものと予想されます。
投資家はESGを上位5つの優先事項の1つとして位置付けている一方で、「ESG目標の推進のために受け入れられるリターンの低下は1%以下である」とする投資家の割合は81%にも上ります。これは長期的な競争力を犠牲にしてサステナビリティを実現するという選択肢が存在しないことを意味します。むしろ、現在の厳しい経済環境下にあっても、ESGバリューチェーンの変革を推進すると同時に競争力を確保、強化する必要があります。
本調査では、競争力に寄与するコスト削減可能性、製品/サービス/プロセスの革新性、およびサプライチェーンの強靭性(図表4の縦軸を参照)の観点からCO2e削減施策(図表4の横軸を参照)のインパクトの程度を検証しました。また、各施策の導入に際して追加投資が必要とされるか否かも評価しています。
この分析から、バリューチェーンおよびCO₂e削減に最大の効果をもたらすと予想される施策が、企業の競争力を強化する最大のドライバーでもあることが明らかになりました。ただし、こうした施策には同時に大きな投資が必要です。
2022年の調査では、製造業関連企業がサステナビリティ目標の達成のために取るべき5つの具体的なアクションを挙げました。2023年の調査結果によると、こうした推奨アクションのいくつかは対応が進んでいますが、その他は1年前と同様の状況にあります。
目標達成のために取り組むべき具体的なアクション |
状態 |
1. サステナビリティを戦略上の優先事項とする |
部分的に対応が進展 |
2. 透明性を確立する |
部分的に対応が進展 |
3. 脱炭素化のロードマップを策定する |
限定的な進捗 |
4. 脱炭素化を製品開発上の 重点事項として設定する | 限定的な進捗 |
5. 循環型のモデル構築を通した、 バリューチェーン横断的な排出量 削減の可能性を再評価する | 限定的な進捗 |
6. CO₂e削減施策によって競争優位性がどのように向上するかを理解する |
2023年調査にて新規で追加 |
CO₂e削減施策、特にバリューチェーン全体に関わる施策は、サプライチェーンの強靭性、コスト削減の可能性、および製品/サービス/プロセスの革新性の観点で競争優位につながることが、本調査により示されました。投資コストの考慮は必要ですが、サステナビリティと競争優位性が両立することは、製造業関連企業にとって明白だといえます。
Sebastian Geibig、Michelle Beck、Alexander Brandenberg、Isabella Heimannも本レポートの執筆に貢献しました。
※本コンテンツは、『The competitive advantage of ESG』を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。