デジタル自動車レポート2023

消費者の真のニーズを理解する

変化し続ける消費者の選好に応えていくうえで、自動車関連企業には人間中心のインターフェースモデルと、車両を超えた領域のビジネスモデルの強化が求められています。「デジタル自動車レポート 2023」では、米国、ドイツ、中国を中心とした世界の消費者を対象に調査を実施。地域別の構造分析に基づく2035年までの定量的な市場予測に加えて、自動車メーカー(OEM)およびサプライヤーの経営幹部、著名な研究者および業界アナリストへのインタビューの結果をまとめました。

コネクテッドサービス – 自動車の各種機能について、重要だと回答した消費者の割合

  • 安全性とナビゲーションは依然として自動車の最も重要な機能として位置付けられますが、オンデマンドの機能も人気が高まっています。
  • 支払意思額(willingness to pay)は、ドイツと米国では月額で20ユーロ未満であるのに対し、中国では40ユーロ未満でした。専門家は消費者の支払意思額をより控えめな金額で見積もっています。

ドイツ

ナビゲーション
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安全性
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オンデマンドの自動車機能
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スマートフォンのミラーリング
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インフォテインメント/エンターテインメント
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車両管理
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ライフスタイルと快適性
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米国

ナビゲーション
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安全性
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オンデマンドの自動車機能
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スマートフォンのミラーリング
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インフォテインメント/エンターテインメント
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車両管理
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ライフスタイルと快適性
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中国

ナビゲーション
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安全性
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オンデマンドの自動車機能
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スマートフォンのミラーリング
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インフォテインメント/エンターテインメント
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車両管理
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ライフスタイルと快適性
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質問:コネクテッドサービスのカテゴリーのうち、あなたにとって特に重要なものは?

2023年
2021年
2020年

次に自動車を購入する際に消費者が選ぶエンジンの種類(%)

  • ドイツの消費者は依然としてBEV(バッテリー式電気自動車)に懐疑的で、BEVの購入を検討しているのは全体のわずか35%にとどまっています。米国の消費者はドイツよりもBEVに対して肯定的で、購入を検討しているのは全体で50%近くでした。
  • 中国の消費者は正反対の選好を示しており、PHEV(プラグインハイブリッドカー)やICE(ガソリン車)よりもBEVが最も高く支持されています。

ドイツ

ガソリン
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PHEV
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BEV
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米国

ガソリン
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PHEV
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BEV
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中国

ガソリン
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PHEV
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BEV
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質問: あなたが自動車を購入/リース/サブスクする場合、どの種類のエンジンの車を選択しますか? 

年齢区分
18~34歳
35~54歳
55歳以上

自動運転―消費者の意識

  • ドイツと米国の消費者の60~70%はレベル4の自動運転車に懐疑的な見方を示す一方、中国ではこうした消費者はわずか15%でした。
  • 普通のタクシーよりもロボタクシーに高い料金を支払う意思があると回答した消費者は、米国と中国ではドイツよりも少ないという結果でした。ドイツでは、高齢者よりも若い世代のほうがロボタクシーに高い料金を支払う意思が強く見られます。
ドイツ
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米国
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中国
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質問:自動運転車(レベル4)を利用したいと思いますか?

ぜひ利用したい
やや利用したい
あまり利用したくない
絶対に利用したくない

CO2削減に向けて消費者が想定する行動変容のトップ3

  • 自動車の利用に関しては、依然として新車または中古車の購入が主流ですが、サブスクリプションモデルも支持を獲得しつつあります。
  • ドイツと中国の消費者は、徒歩や自転車、あるいは公共交通機関の利用頻度を増やすといった行動変容によって、CO2の削減に貢献することを望んでいます。
Top 3 contributions to CO2 reduction

自動車関連企業に求められる次なる施策

自動車関連企業にとっての市場は、すでに車両以外の領域に拡大しています。ユーザーにとっての利用のしやすさが重要であるのはもちろんのこと、人間を中心としたモビリティニーズに応えるためのビジネスモデルの再定義が不可欠です。大きな成功を収めているモビリティエコシステムのプレーヤーは、次の4つを重要な課題として位置付けています。

  • 体験の差別化:適切なデジタルインターフェースを構築することで、多様な顧客ニーズに応える差別化された体験を生み出すことができます。
  • デジタルポートフォリオ:新たな価値創造につながるデジタルサービスのポートフォリオを構築するために、自動車関連企業はさまざまなトレードオフのバランスを取らなければなりません。
  • 価値創造の要因:デジタルサービスはバリューチェーンと車両ライフサイクルの中で、顧客がもたらす直接的な収益を超えた新たな価値を創造することができます。
  • バリューチェーンの統合:OEMは魅力的なデジタルサービスを提供するためにテクノロジー企業との連携を余儀なくされ、コントロールを失うリスクに直面しています。

サブスクリプションをはじめとする新たなオーナーシップモデルが台頭する中、OEMには車両ライフサイクルの管理スキルの向上が求められています。新たなオーナーシップモデルは、基本として顧客とOEM双方にとってWin-Winのソリューションでなければなりませんが、現状においてはOEM側の戦略という観点から検討されることがほとんどです。より柔軟性に富んだオーナーシップモデルの運用に向けて、OEMは確固たる顧客中心型のアプローチ、また中古車の効率的な資産管理アプローチを策定し、既存の製品/サービスの収益性に関する課題を克服しなければなりません。

OEMは、既存の販売網と車両を取得した顧客に対する優遇措置を生かすことで、ライバルであるスタートアップとの差別化を図ることができます。

eモビリティの台頭は、バッテリーや充電など、車両を超えた領域における価値創造の大きな機会をもたらします。双方向充電のユースケースを生み出し、成功へ導くためには、双方向充電に対応したインフラと車両の普及が不可欠です。フロント・オブ・ザ・メーター型のプロシューマーのユースケースは、多くの外部要因に左右されるため、短期的には普及が難しいとみられます。ユースケースの実現と規模の拡大には、ステークホルダーの効果的な協働、また各プレーヤーの懸念を払拭するためのマネジメントが求められます。

未来における成功のカギを握るのは、コアビジネスを超えた包括的なエコシステムのアプローチです。

エコシステム…

※本コンテンツは、Digital Auto Report 2023を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

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北川 友彦

北川 友彦

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

阿部 健太郎

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ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

赤路 陽太

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ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

嶋根 瑞樹

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