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2020-01-22
デジタル技術の飛躍的な発展により第四次産業革命が進む中で、データをデジタルに処理した後の「出口」となる3Dプリンティングにも注目が集まっている。デジタルの世界では、あらゆるものに関してデータが創出・蓄積され、どこにでも高速・低コストで伝送され、Alや高速演算処理により最適な解が導かれるようなるが、3Dプリンティングはこれら革命の成果をリアルな世界に出力する役割を果たすからである。
従来の3Dプリンティングは、大量生産で必要となる金型を必要とせず、小回りを利かせてアイテムを作製するためのツールという程度の位置付けであり、適用範囲は開発フェーズでの試作品や高額が許容されるカスタム製品にとどまる傾向にあった。しかし近年は、製造装置、原材料、ソフトウエアなどの3Dプリンティングの各種構成要素がそれぞれ進化し、比較的容易であったプラスチックだけでなく、より難易度が高い金属に関しても適用可能性が広がっている。
デジタル時代における3Dプリンティングは、従来の製造方法の単なる代替ではなく、製品システム全体の価値を向上させたり、企業のビジネスモデルそのものを変革させるための「イネーブラー」として捉えるべきである。すなわち、従来方法では困難であった最適な形状や寸法の部品を創出することで、部品単体のコストや納期の改善ではなく、最終製品全体の機能・性能(例:燃費)を高める。あるいは、開発・製造の場所、在庫の持ち方、顧客への売り方(例:IPライセンス)を含めたビジネスのやり方そのものを変えるのである。また、3Dプリンティングはその性質・構造上、原材料の効率的利用や製品の輸送コストの削減にもつながるため、普及すれば社会全体の生産性向上や環境負荷の低減に貢献することにも言及しておきたい。
本レポートは、PwCおよびStrategy&が長年グローバルで研究・実践してきた知見をとりまとめたものである。第1章の「3Dプリンティングのビジネス価値」では、3Dプリンティングの原理・原則や潜在的なメリット、新しいビジネスモデルの可能性を概説した上で、航空宇宙・医療・自動車産業における市場性を俯瞰し、今後の普及に向けた課題を考察する。
第2章の「金属3Dプリンティング」では、まだマイナーである金属3Dプリンティングに関して、その市場性・市場構造・主要技術方式などを解説するとともに、五つの価値提供パターンを定義する。それらには、システム全体の価値や性能の向上、個別部品の価値や性能の向上、製品のカスタマイゼーション、サプライチェーンの効率化、サービスおよびアフターマーケットの課題解決が含まれる。
第3章の「3Dプリンティングによる補修部品の将来」では、3Dプリンティングの具体的な用途として、補修部品こそ有望領域であることを業界調査をもとに説く。そのポイントは、製造コスト単体ではなく、在庫・物流を含むTCO(総所有コスト)を見ることであり、その先には、部品ではなく「3Dデータ」を販売するという新しい製造業の形を見据える。大量生産によって金型投資などを回収し採算化する―産業革命以降長らく常識だったこの製造業の考え方に一石を投じる。
終章の「日本における3Dプリンティングの活用に向けて」(日本独自記事)では、日本において3Dプリンティングが欧米中ほど普及していない理由を踏まえた上で、今後の検討・導入に向けた視点を4つのステップで解説する。ここでは、3Dプリンティングの採用を目的化することなく、3Dプリンティングの価値を正しく理解し、軽量化などの「競争力強化」および在庫コスト削減などの「事業課題解決」に適切に採用することの重要性を説く。
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