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何十年もの間、中東の製造業は石油化学業界への偏りが続いています。石油化学産業がGDPに占める比率は、サウジアラビアが24%、アラブ首長国連邦(UAE)が16%であるのに対し、米国・中国では1%未満にすぎません。衣料品や加工食品などの軽工業を除いて、中東諸国は自国で使用する工業製品については実質的にほぼ全て輸入に依存している状況です。
石油以外の製品の輸入が輸出の2倍以上に上るという、この過度な不均衡は、中東地域におけるレジリエンス(耐久力や復元力)を弱め、中長期的な経済成長を妨げる恐れがあります。近年、湾岸協力会議(GCC)加盟国を中心とするいくつかの国々は、国内や地域の需要に応えるため、また海外資本企業の輸出拠点として地域のポジションを確立するために、製造業の多角化と拡大を目的とする意欲的な計画をスタートさせました。一般にこうしたプロジェクトは、国家主導の経済基本計画の一環として実施されます。
こうした多角化プログラムを推進する政府にとって、製造業のうちどのセクターを開発対象に据えるかの選択が極めて重要です。中でもハイテク製造業は、ローカリゼーション(現地化)の優先度がますます高くなってきていると考えられています。他産業にとってハイテク製造業が非常に重要であること、成長ポテンシャルが高いこと、供給が途切れたときに広範囲にわたって経済的な悪影響が生じることが理由として挙げられます。広大なハイテク製造業の領域の中で、各国政府は、投資対象のセグメント(さらには当該セグメントの中のどの製品グループに投資するかも含め)を決定し、大規模プロジェクトを推進するとともに、これらのプロジェクトを確実に成功させるための十分な支援を与えなければなりません。
本レポートでは、中東の製造業の現状、ハイテク製造業をローカライズすることのメリット、さらにはローカリゼーションに意欲を燃やす中東諸国にとっての成功要件について言及します。
ハイテク製造業は、一握りの国の企業が全世界の市場への供給を担っており、極端な局所集中型市場といえます。例えば、2019年の米国議会調査局の推測によると、300mmシリコンウェハーを製造する半導体製造工場126カ所のうち36カ所が台湾、24カ所が中国、20カ所が米国、19カ所が韓国、13カ所が日本にあります。つまり、わずか5カ国に88.9%が集中しているということです。製造能力も同様に地理的に集中しており、韓国が28%、台湾が22%、日本が16%、中国が12%、北米が11%を占め、これら5カ所の合計は全体の90%に達します。
最近、上記以外にも、いくつかの国や都市がハイテク/デジタル関連の製造拠点の建設を成功させています。例えば、ベトナムにおける電子機器組立、フランスのグルノーブルにおけるマイクロエレクトロニクス、リトアニアのヴィリニュスにおけるレーザーテクノロジーが例として挙げられます。これらの代表的な地域は、特にイノベーションやデジタルトランスフォメーションを可能にするテクノロジー、それらを促進するエコシステムの重要性をより強く認識している地域と言えるでしょう。
中東では、UAEが先陣を切ってローカリゼーションを開始しており、Mubadalaに代表される有力企業が人工知能(AI)、クラウドコンピューティング、宇宙システム、通信などのハイテクサービスへの投資を拡大しています。直近では、サウジアラビアもハイテク・デジタル領域のローカリゼーション促進に向けた野心的な計画とメガプロジェクトを開始しました。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を契機として、各国政府、地方自治体、大手メーカーは、グローバルなサプライチェーンへの依存を見直しつつあります。特に半導体など、国内の多くの産業にとって完成品・部品の双方で重要な位置づけのセクターにおいて、レジリエンスを高めようとしており、ローカリゼーションが加速しています。
中東の各国政府は、ローカリゼーションの有望な分野として、大きく3つのハイテク製品群を検討すべきでしょう。当社推計によれば、これらの製品群の中東での市場規模は、合計で約1,250億ドルにのぼります。
経済の多様化は避けられません。COVID-19により企業が大きく依存しているテクノロジーの確保が困難あるいは不可能となったことで、中東地域のサプライチェーンにおける脆弱性が明らかになり、産業のレジリエンスが問われています。テクノロジーとハイテク製品は現代の経済活動、企業活動に不可欠な要素です。ハイテク製造業のエコシステムを確立し、国内・国外の需要を満たすための競争が激化する中で、中東諸国政府は速やかに行動を起こして、勝ち目のある分野(材料、中間製品、最終製品)に狙いを定めなければなりません。そして、ローカリゼーションに成功した企業が事業をスタートさせ、存続できるようなエコシステムを形成する必要があります。
※本コンテンツは、Localizing high tech industries to build resilience and economic growthを翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。