{{item.title}}
{{item.text}}
{{item.title}}
{{item.text}}
日本のコンテンツ産業は高い品質で広く認知される作品を数多く輩出してきました。しかし、近年は莫大な投資で独自のコンテンツを生み出す海外の大手メディアが台頭。クオリティや制作規模の面で水をあけられ、世界市場の中で徐々に存在感が低下しつつあります。日本市場は一定の規模があるものの、少子高齢化が進む中で今後成長を目指すには、海外勢と伍して戦うための戦略が求められています。
その核となりうるのが、原作(IP)からテレビ、映画、ゲーム、漫画などの関連商品を多角的かつ同時多発的に展開し、相乗効果をもたらす「メディアミックス」です。日本のコンテンツ産業が得意とする手法であり、海外においてもメディアミックス展開を希望する風潮が強くあります。
これまでメディアミックスによる経済波及効果の全貌は明らかにされていませんが、PwCのシンクタンク部門であるPwC Intelligenceが、マクロ視点とミクロ視点の両方で効果の算定を行いました。マクロ視点はコンテンツが他産業に与える経済効果を指しており、国内限定でも6.5兆円にのぼります。漫画やテレビアニメ、ゲームソフトといったメディア産業主要4分野の国内市場規模(3.3兆円)と比べると誘発効果倍率は1.94倍で、2008年の北京五輪で記録した1.71倍を上回っています。
ミクロ視点はどうでしょうか。メディアミックス方式による1つの原作の経済波及効果を測定したところ、総合計が最大の「ドラゴンボール」は7.95倍、一時期は社会的なブームを巻き起こした「鬼滅の刃」は5.12倍でした。
こうしたメディアミックスのインパクトを可視化することは、日本のコンテンツ産業が長年抱え続けてきた課題の解決にもつながると考えられます。日本では複数企業が共同出資によって組合を組成し、制作した作品を自社の得意とする事業領域で活用する権利を獲得できる「製作委員会方式」が普及しています。テレビ局や出版社などの各業者が自らの得意な領域でコンテンツを展開する仕組みは、投資回収を見込みやすいといったメリットも少なくありません。ですが、裏返せば個別最適に陥り、コンテンツにかける投資額も小規模にとどまりやすくなります。その結果、コンテンツが本来持っている価値に見合った投資がなされず、利益を逸失しかねない状況となっているのです。
メディアミックスによって、展開したい原作(IP)の生み出しうる経済的価値や投資回収のシナリオを可視化することができれば、こうした状況は打開しやすくなります。コンテンツ産業以外にも資金の出し手が広がり、金融機関や機関投資家が参画することもありうるでしょう。さらに、資金が集まればコンテンツの質を向上できるほか、海外を含めた大規模なマーケティングも実施しやすくなり、チャンスの拡大が見込めます。
もっとも、コンテンツ産業だけではなく、政府もアクションを起こす必要があります。例えば、製作委員会への資金流入を阻んでいる制約の解除や、政府系金融機関による間接的な投資などが考えられます。また、海外展開の支援においては、映像配信やグッズ販売、イベント開催などの支援を行うプラットフォーム機能の設立も重要となるでしょう。
日本独自のメディアミックスによって、世界市場を開拓する21世紀の新たな「セイゾウギョウ(世界市場で異業種連携によって相乗効果を生み出す業態)」の出現を期待します。