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2020-04-23
化学産業では、消費市場や原料供給という観点で巨大な影響力を持つ中国に依存するリスクが高まりつつあったこと、昨今、世界的に環境基準や安全基準が厳格化されつつあることにより、グローバル化学メーカーを中心にプロダクトポートフォリオやサプライチェーンを見直す動きが見られる。新型コロナウイルスの蔓延により、さまざまな産業でグローバルサプライチェーンが滞る事象が発生している今、企業は、これを機に抜本的にサプライチェーンを見直す必要性をより強く認識するべきではないだろうか。(坂野 孔一)
化学産業は急激に変化している。過去20年間、グローバル化学メーカーは、一部の製品の調達先をわずか1、2カ国に絞り込むまでにサプライチェーンの集約に取り組んできた。この集約の背景にあるのは、低コスト志向や大量生産の追求、先進国の環境規制の強化などである。
例えば2019年現在、中国の化学製品の生産量は世界の約39%を占めており※1、2025年までの年平均成長率(CAGR)は約5%、売上総額は4兆8,500億米ドルに達すると予測される。それに対して、同期間の米国のCAGRは約2.7%、ドイツは1.3%、日本は1%未満である。
経営者は、原料や中間製品を、単一または限られた国に過度に依存する危険性を十分理解している。こうした状況に対応して、グローバル化学メーカーの中には、サプライチェーンを再考し、調達先の多様化を図ろうとする企業も出てきており、それがまた新たな問題を生み出している。化学メーカーは、複数の国を跨いだ、幅広く強靭なサプライチェーンを構築しなければならない。多くの国の政府が、より環境保護を意識するようになる中、化学メーカーはそのプロダクトミックスから汚染度の高い物質やプロセスを含む製品を排除することに注力せねばならない。それでも、化学メーカーが市場シェアや利益を拡大できる方法はいくつもある。
PwCの戦略コンサルティングサービスを担うStrategy&は、国際取引に豊富な経験のある世界的な化学メーカー5社(ドイツ3社、中国1社、米国1社)の経営者にインタビューを行った。こうしたインタビューから得られたインサイトや化学産業に対する精察を基に、本稿では化学製品のサプライチェーンにおける変化に対応するために、グローバル化学メーカーが取るべき方策について提案をしている。
短期的な方策としては、供給の確保、代替製法の用意、財務的な「バッファ」の確保などがある。中長期的には、企業は限られた時間内に競争上優位な立場を築かなければならない。そのために、本稿では柔軟で復元力のあるサプライチェーンを構築すること、製品ポートフォリオや事業セグメントを見直すこと、そしてビジネス環境の変化に対して警戒を緩めずに対応することの3つを提言したい。
世界中で環境保護の基準が強化され、化学製品の中には生産への圧力が高まっているものもある。そのため、次のような状況が生じている。
世界的な特殊化学品メーカーのある経営者は、次のように説明している。「いくつかの製品の原料は調達先がひとつしかないので、大きな影響を受けています。供給能力のあるサプライヤーは値上げを繰り返し、過去12カ月で200%も高くなりました」。
図表1は、さまざまな特殊化学品が単一国(この場合は中国)からの供給に依存していることを示すものである。また、この供給依存が今後どのように変化していくのかについても示している。
※1:IHS Markit, 2019.“Inflation adjusted global chemical industry sales”.
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PDFファイル内の執筆者の所属・肩書きは、レポート執筆時のものです。
A new formula for global chemicals supply : How multinational companies can transform their supply chains in light of disruption by Iris Hermann, Nils Naujok, Krishnan Narayanan, Ruirui Zong- Rühe, November 13, 2019