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2020-11-17
2019年10月Googleの研究グループが、スーパーコンピュータでは1万年かかる問題を量子コンピュータによりわずか3分程度で解いたと発表し、大きな話題となりました。私たちが現在使用するコンピュータ(古典コンピュータ)が0か1のどちらかの値で表現される「ビット」で演算を行うのに対し、量子コンピュータは、「量子ビット」と呼ばれる情報単位を使い、量子力学的な重ね合わせの状態(0と1の状態を同時にとる状態)を活用して演算を行うことで、古典コンピュータよりも高速で問題を解くことが可能となります。
2種類の量子コンピュータ : 「ゲート型」「アニーリング型」
「ゲート型量子コンピュータ」は、量子ビットの量子力学的な性質を利用してあらゆる状態を作り、正解の確率(確率振幅)を増大させ、効率的に正解にたどりつくという原理を用いて汎用的な演算に活用が可能です。一方、「アニーリング型量子コンピュータ」は、ゲート型が量子ビットを使ってあらゆるパターンを同時に演算するのに対し、量子ビットに与えた外部刺激(磁場)をコントロールし、トンネル効果という量子現象によって安定した状態を探索する最安定な解にたどり着く方式で、組み合わせ最適化問題に特化したコンピュータと位置づけられています。
適用産業
汎用的な計算が可能なゲート型量子コンピュータは、第1段階として量子ビット数が100以上を実現すると、幅広い領域で活用が可能となり、第2段階として数千万を超えると、現在のさまざまなデータの暗号解読にも活用できるようになると言われています。量子ビット数が100を超えた際の代表的な適応産業領域として、ヘルスケア、化学・素材などの製造業、金融、公共領域などが考えられており、創薬につながるたんぱく質の動きやゲノム解析、新材料創製につながる化合物シミュレーションなどが想定されます。さらに数千万量子ビット数が実現されると、現在の暗号方式として活用されているRSA暗号や楕円曲線暗号の解読が可能になるとされています。
研究動向
新たな原理を用いた量子コンピュータに世界中の多くの企業・組織が期待を寄せ、積極的な研究開発が進められています。本レポートでは、①ゲート型量子コンピュータ(量子ビット数、コヒーレンス時間、誤り訂正符号、ソフトウェア開発)②アニーリング型量子コンピュータ、そして量子コンピュータへの対抗手段としての③量子暗号通信の3つのテーマに関して、積極的な研究を進める産官学の研究動向を紹介します。
今後の発展および実装時期
Strategy&がムーアの法則を量子ビット数に適用した議論を参考に行った予測によると、量子ビット数が100以上になる第1段階の量子コンピュータは2025年までに実現、一方、第2段階となるRSAなどの暗号の解読が可能なレベルの量子コンピュータの実現は、2040年台中ごろと先の未来になるとされます。また、最も量子コンピュータが活躍するのはサイバーセキュリティの領域で、RSA暗号や楕円曲線暗号の解読が可能になるとされる段階まで量子コンピュータの開発が進んだ場合には、軍事・国家セキュリティの観点から、企業間にとどまらず国家間の競争になることも想定されます。競争・協調領域をどのように設定するのか、10年先を見据えた戦略を今から考えておく必要があるのかもしれません。
レポートの詳細は、PDFファイルをダウンロードしてご覧いただけます。
PDFファイル内の執筆者の所属・肩書きは、レポート執筆時のものです。