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自動車のあり方が大きく変わろうとしています。そのカギを握る概念が、車の価値や性能をソフトウエアが左右する「Software Defined Vehicle(SDV)」です。SDVは今や自動運転や電動化といった「CASE」と呼ばれる新技術を推し進める上で欠かせない要素の1つとなっています。
これまでの自動車は車体というハードウェアで機能がほぼ決まり、購入した後は価値が徐々に減少するのが当たり前でした。SDVはソフトウエアによって購入後も自動車の機能が拡大・強化されるため、仮に持ち主が変わったとしても継続的かつ柔軟に「個客」最適が図れるという点で、ユーザーにとって大きなメリットがあります。自動車メーカー(OEM)にとっても息の長いライフサイクルビジネスの創出につながり、新たな収益機会を生む可能性があります。すでに1兆円規模の投資計画を掲げるOEMも出てきました。
しかし、SDVによる自動車の構造変化はOEMにも大きな変革を迫ります。極端に言えば、ソフトウエアのほか、それに対応するコアな部品や電気・電子部品の構造(E/Eアーキテクチャ)に自動車の価値が宿ることになるからです。既存のOEMが強みとしていた生産や販売の付加価値も減少する中で、サービスを軸にした差別化が求められるようになります。スマートフォンの世界で起きている現象が、自動車の世界にも押し寄せていると言えるでしょう。
SDVはE/Eアーキテクチャの進化に応じて3種類に大別されます。このうち最も先進的な第4~5世代の「ゾーン型」をけん引するのが米中の新興OEMで、欧米の従来OEMがこれに追随する形となりそうです。2030年には新車販売台数の約2割がゾーン型になると見込まれます。
新興OEMがゾーン型を先導できる理由は、これまでの取引関係のしがらみがなく、メガサプライヤーや半導体メーカーなどと水平分業化してアジャイルにE/Eアーキテクチャやコアな部品の開発に取り組めるためです。一方、既存のOEMはピラミッド構造のサプライチェーンが構築されており、サプライヤー側の意向もあって開発体制を抜本的に変えづらい点が足枷となります。
SDV分野で米欧中が先行する構図の中、日本のOEMは一歩遅れているとの指摘もあります。では、巻き返しに向けてどのような取り組みが必要になるのでしょうか。DXやAIを活用した「既存事業の深化」と「新規事業の探索」を同時に進める「両利き」の経営だけでは不十分です。SDV時代に適応するための「既存事業の再創造」も欠かせません。言わば「三刀流」の舵取りです。
既存事業の再創造にあたっては、SDVに対応するため以下の3つの要素を変革する必要があります。
戦略:事業インパクトの把握と、SDV時代における勝ち筋の検討
組織/オペレーション:SDV化に最適化されたオペレーティングモデル・基盤の構築
人材:SDV化に向けて必要な異才の取り込み
自動車のあり方が大きく変わろうとする中、SDVを軸にした「ビジネスモデル・リインベンション」をどこまで強力に推し進められるかが、次の10年の立ち位置を決める要因となりそうです。