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デジタルトランスフォーメーション(DX)が本格化するモビリティ業界では、あらゆる関連企業に多様な機会がもたらされています。本レポート(第2章。第1章はこちら)では、地域別の構造分析に基づく2035年までの定量的な市場予測に加えて、自動車メーカー(OEM)およびサプライヤーの経営幹部、著名な研究者および業界アナリストへのインタビューの結果をまとめました。
自動車業界のDXには、いくつかの重要なトレンドと特徴的な変化が見られます。モビリティ関連企業はこれらのトレンドと変化を踏まえ、柔軟な戦略によって変革に取り組んでいく必要があります。
中国のOEMは自国内で優位なポジションを確立する一方、欧州でもその勢いを拡大しています。サステナビリティ(CBAM)、ハイテク(CHIPS法)、透明性(デジタル製品パスポート)、プライバシー(GDPR)など、主要市場ではさまざまな領域で新たな規制が導入されており、 自動車業界のプレーヤーは3つの地域(米国、EU、中国)でローカルな要件への対応により一層注力しなければならないとみられます。
デジタルな車両体験、顧客満足度、デジタル技術の導入コストのバランスを図っていくことが、今後も重要な鍵を握ります。OEMは、自社が提供する体験の差別化に焦点を当てながら、エコシステムのパートナーシップを通じて高度な技術的ケイパビリティ(機械学習、OS、クラウドストレージ)を獲得しなければなりません。
eモビリティの分野でデジタルな機会を捉えるべく、多様な企業がソフトウェアやソリューションの開発を進めています。特に大きな機会を生み出しつつあるのが、バッテリーと充電のバリューチェーンです。OEMは、パートナー企業と協働するための独自のプラットフォームを展開して、新たなサービスの統合と提供を図らなければなりません。このことはサプライヤーにとっても、新たなサービスをベースとした継続的な収益を拡大していく機会となります。
2030年代の欧州におけるデジタルe-モビリティの機会
ADは実験の段階を経て、自家用車およびシェアードサービスの両方で商用化の段階へと徐々に進化しつつあります。高度なAD(レベル4およびレベル5)の導入は従来の想定よりも遅れており、新車販売に占める割合はEUで7%、米国で9%にとどまっています。中国では政府の積極的な施策に後押しされ、2035年時点で新車販売の36%を占めるという、より楽観的な見通しとなっています。
トレンドの第一波からの示唆:モビリティ関連企業が焦点を当てるべき領域は差別化ではなく、資産の有効活用
初期段階における参入企業の事例が示すように、このビジネスモデルで成功を収めるには、資産の活用方法に明確な焦点を当てる必要があります。この分野で新たに台頭しつつあるアプローチは次の3つです。
ローカルMaaSプラットフォーム
企業や自治体、公共交通機関などによる独自のモビリティアプリやサービスの開発(例:Trafi Whitelabel、Moovit)を支援する技術的ソリューションを提供
統合的な“スーパー”アプリ
域内で最も人気のあるシェアードモビリティプロバイダーを少数のアプリに統合(例:ドイツのFreeNow、Bolt、SixtとMiles)
グローバル・アグリゲーター
さまざまなプロバイダーのシェアードモビリティサービスを組み合わせたり比較したりすることで、ユーザーが最適なサービスを見つけ、利用し、料金を支払うことを支援
(例:Cogo mobility)
車両のコネクティビティがますます重要性を増しており、OEMが競争優位性を維持していく上でも大きな役割を担うようになっています。米国と中国では、より高度なソフトウェアとAD機能の普及を背景として、自動車の総保有台数にC2~C3のコネクティビティレベルの機能が搭載された車両の占める割合が増えていくとみられます。
主要地域における電気自動車(EV)の普及は、今後の10年間においても拡大の勢いが衰えることはないとみられます。EVの普及を後押しする規制に加え、OEMによる積極的な投資や新製品開発を背景として、BEV(バッテリー式EV)が新たなパワートレインとして、これからも高い人気を集め続けると考えられます。
AD車の普及を促進するためには、さまざまな技術的・法的なハードルを克服しなければなりません。消費者が新しい技術に懐疑的であるという問題も残されています。とはいえ、ADは実験段階から商用化の段階へと徐々にシフトしつつあります。中国では政府の施策による積極的な支援や5Gの受信地域の広さを背景に、ADの急速な普及が期待されています。
デジタルサービスや革新的な移動方法の需要が高まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大以降、移動手段の多様化が進んでいます。現在、MaaSとVaaSは特に都市部において一層の人気の高まりを見せています。ただし、長距離移動ではマイカーが主流の状況は今後も変わらないことが予想されます。
モビリティ関連企業が未来においても競争力を発揮し続けるために優先すべき戦略は、業種によって大きく異なります。
※本コンテンツは、Digital Auto Report 2023 (volume 2)を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。