プラスチックとネットゼロ

生活者の行動変容と炭素循環を実現する新たな社会システムの実装

プラスチックは我々の生活のあらゆる場面で活用されており、さまざまな場面で社会課題を解決するなど利便性をもたらしています。しかし、同時に大きな社会課題の原因にもなっています。代表的なものがマイクロプラスチックによる「海洋汚染」と製造および焼却時の「温室効果ガス排出」でしょう。

プラスチックを巡る世界の潮流は大きく変化しています。使い捨てプラスチックの流通規制を導入する国や地域が出てきたほか、プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際条約の策定も進んでいます。直近のCOP28(国連気候変動枠組条約第28回締約国会議)においても日本とアラブ首長国連邦(UAE)がペットボトルの化学分解を含むリサイクル工場の共同建設について合意しています。温室効果ガス排出を含め、多くの規制や施策の導入が急速に進展する中、こうした潮流に対応しきれない企業は淘汰される危険性が高まりつつあります。

一方でプラスチックが解決している社会的課題も多く、安易に「プラスチックを無くす」という方法だけでは問題の解決には至りません。そこで重要になるのが、自社の製品やサービスを「6つのR」に照らし合わせて対応策を導出することです。すなわち、プラスチックを無くす方向の「Remove」「Replace」「Renovate」と、プラスチックを必要以上に増やさない方向の「Reduce」「Reuse」「Recycle」です。

これらを踏まえて最適解を導き出し、トランジションプランなども含めたサステナビリティ戦略を策定することが望ましいと考えられます。今や「社会課題の解決」と「事業の存続」は一体となっています。プラスチック関連企業にとっては大きな課題である一方、新たな競争力や事業機会の創出にもつながることから、企業の存続をかけて行動していくことが求められています。

加えて、国や産業団体がリーダーシップを発揮し、ある程度の強制力をもって生活者などの需要家に行動変容を促す必要もあるでしょう。プラスチックによる海洋汚染は、不法投棄を含む人為的行為が原因だからです。具体的には、行動変容を実現する容器循環などのサービスや、ネットゼロを実現するケミカルリサイクルなどの炭素循環プロセスを、新たな「社会システム」として実装することが考えられます。そのためには国による補助なども必要になることから、官民が共通の問題意識を持ち、連携して取り組まなければなりません。

プラスチックとネットゼロは共生可能です。ただし、その成否は我々にかかっています。そのことを十分に認識し、我々自身と未来の子どもたちのため、課題に真摯に取り組んでいくことが重要です。本レポートが、読者の一助になるとともに、この国と世界の自然を守る一助になることを切に願います。

プラスチックとネットゼロ 生活者の行動変容と炭素循環を実現する新たな社会システムの実装

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赤路 陽太

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ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

石原 麻紗子

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シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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